カブトムシ 2009.10.21

 

僕の腕を腕の中に飛び込んできた そいつはカブトムシ。

そっとなでれば 不細工に飛び散る光たち

指かみつかれた 14の夜

 

「俺を飛ばしてみろ」と誘う そいつはカブトムシ

6本足を操ってやった 体が震えた 心の羽を手に入れた

 

固い甲羅の中 柔らかく響く 自由な音色を

がむしゃらに鳴らして 飛んでいく

地をはうだけの虫も 飛んでいく

 

僕の声を風に乗せて 消していく夏のカブトムシ

その体は 様々な思いを吸い込みおもくなる

いつ死ぬかも知らず

 

春風に吹かれ 出会いを刻み

太陽の日差しに 思い出過ぎるときも

木枯らしに吹かれ 別れを想い

凍える苦労の日々を耐える時も

季節を超えて 飛ばし続けた

これからも ずっと

 

そして今 こうしてかき鳴らす 祈りはカブトムシ

大切な人へ届ける光たち

指も痛くないよ 思い切り響かせるよ

あの日の空が 色づくことを信じて

 

こいつとなら

君へも届く気がした